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まずは一膳! 箸作りの勧め こんな箸が欲しかった! 転ばない・滑らない・先が利く、五角形・強化木の箸つくり 「弘法は箸を選ぶ」、玄人向け箸作り講座 |
木工といえば大抵、本棚や机やら椅子やらがゾロゾロとなるのが普通でしょうが、まず真っ先に取り上げたいのが食べるための箸です。 割り箸も変な箸より使い易いのですが、それは脇においておきましょう。 箸使い・箸選びについては、そういったことを図解入りで丁寧に解説したページがいくらもありますのでウェブ検索をしてみてください。また。「中国の箸」・「韓国の箸」などで検索するとおおよその日本の箸の基準が見えたりもしますのでお試しを。 結論から言いますと、 五角形の断面で、材質は強化木。普通に使うならこれが最高クラスの箸です。 最初の使い心地そのままに、快適に10年使えます。実際にはひどい扱いをしなければそれ以上使えます。ウチで10年と8年選手がいますが全く問題ナシです。 ところが、これが売っていないんです。 なぜ、ないのかと言いますと、主に二つ理由があるようです。 ■ 先ず形態から 先細の五角形にするにはかなりの仕事が手仕事になります。それだけで希少性が上がります。 互いの面が平行な6・8角の方が作りやすいことは想像できると思います。 ■ 材質から オノオレカンバや黒檀や鉄木などの硬木は、どうにか鉋が掛かります。しかしフェノール樹脂を含ませて強化した強化木では木工の道具は歯が立ちません。 フェノール樹脂は食器などにも多用される樹脂です。 木と樹脂を層状にし、硬化とプレスをして作るという強化木は、もし、断面が円で良いということであればかえって機械的な加工はし易いかもしれません。現に量産している箸メーカーもあるようです。 桁違いの量を作るために機械から作れば五角形の断面でというものも量産可能かもしれません。しかし、箸は単に二本の棒っ切れがあればよいというものではありませんよね。 英語だと「chopstick」。この感じでは全然駄目です。チョップですぜ・・・。割り箸ならなんとなく合いますが。 stickには突き刺すという原義があるそうですが、それでは何か焼き鳥の串を二本集めて「箸」と称しているみたいで自分の舌に串を打ちそうになります。 特に「先が利くか利かないか」、これは日本の箸の場合、物凄く重要なことです。 尖っていれば先が利くかと言えばそんなことはなく、途中がどのように細くなっているか、最後の数センチがどのように削れているか。太いところが持ち手に合っている太さかどうか。 総合的に見なければ分かりません。 結局のところ、手間が掛かって普通なら商売にならないのが五角形強化木の箸です。 ここで、箸診断をしてみてください。 愛用の箸の先を左右(上下でも)からあわせて見ます。写真左参考。 |
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その状態で太い方の開き具合が指一本より大きいとちょっと問題ありです。 実際には右写真のように持つと思いますので、この間以下が基準といえるでしょう。 これで、「先が利く箸」が簡単に診断できます。 本当は簡単なんです。 箸がもし曲がっていたら、かなり問題ありです。木工の心得があれば削って中心を出し、生(き)うるしを買ってきて拭きうるし仕上げにすると良いのではないでしょうか。 買ってから、しばらくしてこの処置を行うと断面が丸でもとても使いやすくなります。 漆かぶれは人によって程度が違います。 「皮膚が弱いから漆は駄目」と思い込んでいる人が結構いますがこればかりは試してみないと分かりません。東急ハンズのようなところで小さなチューブ入りが売ってます。 扱い方は買ったところで聞いてみてください。 私自身は「一家に一本、生漆を!」と考えている位で、漆の良さをもっと知って欲しいと思っています。 塗り箸で曲がっているとお手上げです。また。曲がりがひどいのもお手上げです。 木地のものであれば、買う前によーく木目を見ましょう。適当に買うとほとんど外れです。 よーく選んでも曲がることは多いです。 先が利く細くて良い箸ほど、曲がったときに極端に使いづらくなります。 螺鈿とかで飾ったのとは違う、究極の使い易い箸を!という人は、自作しかありません。 |
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箸を作る 強化木の丸棒・直径10ミリを用意します。 私はいつも東急ハンズで買います。 写真上の少し短い箸は、使用者が食事中に先を食べてしまったので全体を削りなおしました。10年ものです。 真ん中は私が使っているもの。8年もの位でしょう。 長い一本ものが削り始めの状態。 これを目指す長さに切って・・・、とやると後々作業がやりに難くいので、二本分にほんの少々の余裕。 削る前に両端に中心点と、真ん中当りに削り始めの五角の基準点を必ず印します。 せっかちなあなたは私の踏んだ轍を更に深くしてはいけません。 一本ずつ削るのは大変ですよ。 常に確認するのは棒の中心と順々に細くなっているかどうかという点です。 100ミリの普通のサンダーを用意して、これにFRP用のメッシュになった砥石を取り付けます。防塵ガードは付けられないので外します。 当然諸刃ですから危険です。使用は自己責任で判断してください。 私は作業中、うるさいのは嫌なので左のイヤーマフを着けてやります。 |
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少しずつ少しずつ |
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FRP用砥石だと焼き付きをほとんど防げます。それでも一気に削ると焼き付きや削りすぎを起こしますので、少しずつ、少しずつやってください。 急がないこと、これが一番大切だと思います。 |
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そして、真ん中を切断。初めて箸らしくなりました。 「五角形はどうやって出すの?」という人がいると思います。私の場合は一辺だけ基準になるようにしてあとは目と手で適当にやってます。 かえってそのくらい腹をくくって適当にやった方がほぼ五角形になるのではないでしょうか。 |
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ほぼ形が良くなったら目の細かい金やすりでサンダーの目を取り、細かい調整をします。 そして耐水サンドペーパーの#400か#600位から#1500くらいまで番手を上げて水砥ぎします。 この時に手元の角は柔らかく、先は角を残すようにすると持ったときの当りが柔らかく、良いと思います。 |
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この写真のものを作るのに急がず怠けずで3時間はたっぷり掛かりました。 「3時間も掛かる」のか、「3時間で10年間も快食出来る」と考えるかはそれぞれですし、毎年正月に新しい箸を下ろす人もいると思いますので、こればかりは価値観次第です。 |
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また、危険なサンダーの技術にはあえて踏み込んでいません。 かかる時間は私の場合ですから参考にならないかもしれません。 全て自己責任でお願いします。 |
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フェノール強化木は使い始めにマヨネーズみたいな味と香りがします。調べた限りではこれが即、毒であるというデーターはないようです。しばらく使うと無くなります。 強化木も製造間もない場合、ほんの少し反る場合があります。 出来れば、少し使ってもう一度最終的な形に削るという風に、余裕を持って削った方が良いかも知れません これは、特に先が細めが好みの人に。 |
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断面が5角形という微妙さ この写真はスイスのPBというメーカーのマイナスドライバーです。 このシリーズは手元が5角形になっていて、なぜかとっても手に馴染みます。 ちょっとした「手の幸せ」がここにあります。 私が道具を選ぶ基準のひとつが「手の幸せ」です。 |
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五角箸についても、手の構造との微妙なマッチングがあるようです。 全ての人が5角形が使い良いとは言えないと思いますが、かなり好評のようです。 黄金率とか関係しているの分かりませんが、理論より人の手の方が進んでいると私は考えていますので、それをきちんと選べる手や目のほうを養いたいと考えています。 それにはまず箸から作る。お勧めなんですが・・・。 |
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