朱と塩 |
修験の地、埼玉県越生市の黒川三滝にて。 ここは修験の土地独特の重く、濃い空気が満ちたところ。 雄滝・雌滝・天狗滝の三滝からなり、雄滝で滝行をする白衣の人も極たまに見られ、近くに「役の行者」に関する伝説もある。 お不動様・竜神・水神などが祀られ、ここ数年で歩道や階段が整備されても、容易に変わらない古い日本の信仰心がまだ残るところです。 それは当然不気味さも伴っていて、子供の頃に良く見た夢、静かで奥深い神秘性をない交ぜにしたモノクロームに近い夢、それに通じるものもあり、懐かしい。 それほど高さがあるわけではないが、周りから包まれるような滝の音と、昔から身の内に覚えのある湿った暗さに魅せられ、滝を見たくなるとここに通っていた時期がある。 滝の音が体内と響きあい、滝音が体内から湧き出てくるような体験をしたのも、この三滝。 山を駈ける行者が、「靡き(なびき)」と呼ばれるところに声明をあげ, 印を切るように、朱(バーミリオン)と塩で「形」をつくり、すぐに全部回収していった軌跡です。 赤: 地・血・いのち・霊・あかり・明き・・・の色 赤色の朱は修験の地ということで丹との関係を考え、あえて水銀朱(辰砂/バーミリオン/HgS)。 最も古くから使われてきた赤い顔料と言えば弁柄(酸化第二鉄/Fe2O3)であり、水銀朱が日本の歴史に登場するのは縄文後期以降と言われます。水銀朱は時に宝石のような六角柱の美しい結晶を作ります。 白: しるし・知・汎・全てを含む色 塩は東京都式根島にてTさんの元で、椿の薪で贅沢に焚きながら作った自作の塩。 |
朱の印 天狗滝近くの杉の根元 |
塩の山 手前の岩の上 |
朱と塩の山 天狗滝のすぐ上の森 伐採された杉の切り株の上に このような形で山が変わってゆくのは現代の象徴かもしれません。 伐採あとには杉の苗を植林していますが、私には木に竹を接ぐような行為に思えます。 |
1998 埼玉県越生市 |
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