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くるくるみ 2



野口体操の創始者、故・野口三千三(ミチゾウ)先生はよく、様々なおもちゃを教室に持ってきて授業を始めました。

レッスンの中で、何度もいや何十度かもしれません。その原理や、動きの問題を探り続けたおもちゃに「くるくる」、あるいは「くるくるおもちゃ」があります。



ここにその原型をお見せできないのが残念です。

どこで野口先生は最初に見つけたのでしょうか?
ひょっとすると夜店?露天商?巣鴨の刺抜き地蔵通り?あるいはデパートでしょうか。

もともとはガリガリトンボとかそれに近い名で昔から細々と売られていたようです。(あるデパートではドイツ製も見かけました)
等間隔に刻みのある角材に、釘やピンでユルユルの薄い羽根が取り付けてあり、一見、ごつくて出来の悪い竹とんぼにも見えるかも。制作キットも時々見かけます。

それを片手に、もう一方の手に持った棒でカリカリ・コリコリとリズミカルに擦るとあら不思議。
歯車もモーターもないのにユルユルだった羽根がくるくるときれいに回り始めます。

初めて見た時はびっくり。あまりにも自然に回るので何かの仕掛けを疑ってしまうくらいでした。

野口先生は随分工夫され、自作したりしてました。
二つのおもちゃを手で押し付けて片方だけ擦って両方を回す方法。刻みを変え手を換え、様々な遊び方を考え出して生徒にやらせたり、考えさせたり、からかったり・・・

そして、棒だけでなく、指で擦ってみたり

野口先生の手になるものは既に、「ガリガリ」というがさつな感覚のものでなく、「くるくる」と軽快な気持ちよさに変わっていたものです。


制作するのに必要なものの一例を挙げます。

 割り箸のような棒一本または、二本。羽根となる平らな板:例えば下敷きのかけら、経木、植木の名前を書いておく白いプラ板など。羽根を止めるピン、小釘など。 

1) 棒の一本に適当に等間隔にカッター等で刻みをつける。
2) 羽根の真ん中に(これが重要!)ピンより少し大きい穴を開けピンで止める。
基本はたったこれだけです。

私も近くの篠竹で作ったモノがうまく回ってから、くるくるおもちゃに躍らせられるようにして色々作ってみました。

先生が名付け直した「くるくる」あるいは「くるくるおもちゃ」は本当にいろいろな自然の問題を考えさせてくれます。

原理は一緒、形はAKIRAオリジナルです。材質も製作方法もいろいろと工夫し、試してみました。

これがかなり初期の篠竹によるくるくるとんぼ
棒でもいけますが、爪でも唸るくらい良く回ります。

この写真だと刻みがほとんど見えません。

)羽根は、すこし斜めになっていますが、これは写真写りのための演出。本来は動かない状態なら水平になります。



「刻みを擦る」ことから「刻みで擦る」へ

自分から投げかけた動きに対してのアタリを待つ。
名前は「太公望」。二枚羽。


  材料:竹・木・水晶・メノウほか


太公望

左の写真のように「ギザ棒」にて柔らかく当てて回す。うまくやると本当に良く回ります。

軽快で繊細。




棒から指の繊細な感覚へ

謹製。特製「くるくるとんぼ

棒で擦るのも楽器みたいで楽しいものです。
でも、もっと密着して指(爪)で擦る

丁度良い位置とリズムとを感じ取りながら、とんぼと一つになってゆく感じは更によろしいのでは?

私のイチオシはこの、くるくるとんぼ

綺麗な形になるように一本一本竹棒を削り、木の羽根、メノウほか天然石のビーズを付け、調整をして仕上げます。

ビーズは綺麗なアクセントにもなってますが、永く大切に使ってくれたらなぁ、という作者の心情もあります。

回る・回らないは、「響くところ」を直感的に見つけ出させるかどうかに掛かっています。

ビリビリと振動が増幅する場所・強さ・速さをつかめばあと一息。羽根が左右に小刻みに震え、その感じを大切に少しだけ何かの条件を変えてみると突然勢い良く回り始めます。
ちょっと慣れれば往復で切れ目無く回し続けられるでしょう。

その適当な感じを掴むまでの時間は人それぞれです。下は五歳くらいから、上は何歳でも遊べます。

回すには適当に、ね。



人差し指・中指の爪をガイドにして、親指の爪で前後に擦る。
最初は一方方向だけで練習する方が楽かも。




左は上記の篠竹とんぼ。右は2枚羽根・3枚羽根の2本を同時に回す。



ここで少し、原理について考察してみます。

共振」という言葉は聞いたり使ったりしたことがあると思います。

モノそれぞれに異常に振動する振動数(固有振動数)があり、その振動数やそれを整数倍、あるいは整数分の1倍・・・の振動を与えるてもやはり他の振動数とは全く異なった強い振動を起こします。
音楽のドミソの和音はドという基音からするとミ・ソが倍音という周波数的に同じ関係にあります。

機械のエンジニアはこれをいかに無くすか、そういう方向で努力する事が多いようです。
反対に楽器演奏者はこれをいかに活かすか、ということが重要になって来るでしょう。

くるくるおもちゃは楽器といっしょで「共振」と共にあります。もう少し柔らかい言葉を使うと、「響くところ」を見つけ出し、その響きに寄り添うことが必要になるのです。

結果は外からもはっきり見えますが、それ以上にやっている本人がはっきりと体の変化で分かると思います。
良く回っているときは、「喜びエネルギー(クルクル波とも言います)」とでも呼びたくなるエネルギーがフワッとからだを駆け巡りますから。

原理についてはまた後で述べてゆきましょう。


話変わって、原発の高速増殖炉・「もんじゅ」でのナトリウム漏れによる大事故がくるくるおもちゃと関係があるのです。

流れるナトリウムが温度計のさやに当たり、カルマン渦と称されるペアーの渦(実際にはとても複雑な複数の渦だと思います)を作ります。ここまでは別に普通のことなのですが、ナトリウムの流れ具合、渦の状態がぴたりと温度計のさやを共振させて破壊したようです。
これは回転が振動に変わった逆の例。

銀河がなぜ渦を巻くのか?だって関係ありそう。

自転車のネジが走行中に落ちてしまうのだって、「くるくるおもちゃ状態」ですね。

結構身近にあります。


これは赤メノウ付き。刻みはネジのように一本につながっています。




自然界の共振・共鳴の精妙さ

七枝のくるくるとんぼの教え

自然の生きものは、共振し易い。しかし完全には共振しない。

微妙なずれがある。
それが、崩壊・絶滅を防いでいる。



狭い家で、取って置くのが難しく、既に庭の土に還ってしまったとんぼに、「七枝のくるくるとんぼ」があります。

採ってきた竹の枝先に、やはり竹の小枝で作った羽根を付けたとんぼです。枝ぶり良く七つの枝それぞれに羽根をつけてあり、全て一遍に回ったら御喝采!!

そう思って作ってみた。

(写真左のとんぼは一枝。こんな感じの枝が七つあるものを作りました。)

しかし、これは難しかった。先ず、ギザ棒では2・3個。マッサージ用の小さなバイブレーター(これはモーターの回転を振動に変えています)でやってみるとあと一つ二つ増えるくらいです。
一つ増えると、違うところが止まる。その繰り返し。

ただ、そうやって試している時にハタと気がついた。

全てが回らないのには意味があるのでは?

これが、もし簡単に共振して全て回ってしまうとしたらどうでしょう。
木や竹は嵐や大風がきた時、ゆすぶられるHz数が合ってしまえば簡単に折れて砕けてしまいます。「もんじゅ」の温度計が破壊されたように・・・

おそらく、七つくらいの羽根なら極端に強くて速い振動装置を使ってどうにか回せるかも知れません。でも、「自然は単純ではない」。
その精妙な神様のさじ加減を尊重したくなりました。

共振(共鳴)しやすく、し難い両面がある。ここだけ取り出すと当たり前なのですが、それが生きるのに必要な条件。これは物質的な側面ばかりではない気がします。

まだ続きます

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